
定年退職して運動不足になって太りだした。
見た目も見苦しいし、言うまでもなく健康に悪い!
そこで、週2-3回、30-40分ほど散歩するようにしている。
散歩が日課になってから、いままで知らなかった道を歩くことが増えた。
どこへ向かうでもなく、ただ気の向くままに、歩くだけ。
その日も、学生時代、通学で毎日歩いた道の途中にある小さな路地を曲がってみた。
ふと曲がったその路地の先に、小さな公園がぽつんと現れた。
ブランコもすべり台も、使い込まれて錆びていた。
平日の昼間だからか、公園には誰もいない。
今は子供もここでは遊ばないんだろうな。
『いつから、ここにあったんだろう』
自分が学生だった頃は、このあたりは一面の田圃だったはず。
こんな道も、もちろんこんな公園もなかった。
気が付いたら、あたりは住宅がいっぱい建っている。
多分ここ何年かのうちに開発された住宅地なんだろう。
近くにいたのに、全く知らなかったことに少し驚く。
そんなことを考えながら、公園の中に砂を被ったベンチを見つけた。
そっと腰を下ろした。
ちょっと冷たくて、でも、なんだか落ち着く感触。
過去の記憶との対話
ベンチに座って、ペットボトルのお茶を飲みながら、風の音を聞いていると、
ふと遠い記憶がよみがえってきた。
何十年も前になるけど、小さな息子と来た近くの公園も、こんな雰囲気だったな。
ブランコとジャングルジム、そして小さな砂場しかない公園だったけど、嫁さんの作ってくれたおにぎりを持って、みんなで木陰で一緒に食べたっけ。
時間はときどき、不意に巻き戻る。
何でもない景色が、思い出を連れてくる。
締めの余韻
知らない場所だったはずの公園が、
ほんの少しだけ、自分の居場所になった気がした。
今日という日は、何も起きなかったようで、
昔の記憶が、静かに心を揺らしていた。