
会社員だったころ、、
私はずっと「時間が欲しい」と思っていました。
毎日、仕事の納期や締め切りに追われて、
「もし一週間、何もせずに過ごせたら、どれほど幸せだろう」って。
そして退職して――
時間は、山ほどできました。
最初の頃は、軽やかでした。
目覚ましをかけない朝。
平日の昼間に飲むコーヒー。
好きな時間に観るドラマや映画。
人生の“休み時間”を手に入れたような、
少しの優越感さえありました。
でも、しばらくして気づいたんです。
……午後3時。
以前なら会社で、
眠気と闘いながらコーヒーを飲んでいた時間。
「よし、あと数時間頑張るか」
そうやって自分に気合を入れ直していた。
でも、今の午後3時は――静かすぎる。
そういえば、今日まだ誰とも話していない。
妻はパートで、家には私ひとり。
予定もない。
呼ばれることもない。
ただ、西日が部屋に差し込んでいるだけ。
あの瞬間、初めて思いました。
「ああ……時間って、重たいんだな」って。
会社員時代の時間は、
ベルトコンベアみたいなものでした。
黙って乗っていれば、
会議があって、仕事があって、勝手に流れていく。
でも、無職の時間は全部、自分持ちです。
何に使うか。どう過ごすか。
自分でハンドルを握らないと、一秒も前に進まない。
自由って、
少しだけ不自由ですね。
何でもできるということは、
何もしなかった自分にも、言い訳ができないということだから。
でも最近、
その“重さ”を楽しめるようになってきました。
無理に時間を埋めるのを、やめたんです。
「ちゃんとした意味のある1日を送らなきゃ!」という焦りを、
一度、手放してみた。
窓から入る光をただ眺める。
昔読んだ本を、もう一度開いてみる。
お湯が沸く音を、じっと聞く。
ベランダから、ただ空を見る。
“何もしない”を、ちゃんとやってみる。
すると不思議なことに、
それまで少し重かった午後3時が、
心を整える時間に変わっていきました。
これが、私なりの
平日午後3時の正しい過ごし方です。
何かを成し遂げることでも、
成長することでもない。
ただ、今ここにいる自分を、
置き去りにしないこと。
もし今、時間がありすぎて戸惑っている人がいたら――
それは失敗じゃありません。
“何もしない”という贅沢を、
味わえる立場にいるということです。
今日の午後3時、あなたは何をしますか?